• 遭難フリーター



    http://www.sounan.info/

    毎日新聞)「製作費3万円」の自分撮りドキュメンタリー。試写の後、「フリーター自己責任論についてどう考えるか」と問われ、「基本的には自己責任」と答えた。

     06年春から1年、日研総業からキヤノンのプリンター工場に派遣され働いた。動機は「東京に出たかったから」。埼玉県本庄市で単純労働を繰り返す「浅瀬でおぼれているような」日々を、小型ビデオカメラで撮り、携帯電話で日記をつけた。07年、実家に戻って編集した作品を、山形の映画祭に出したところ話題に。

     「自己責任と社会責任、両方あると思う。自分の人生を生きているのは自分なので、その責任は否定したくない。でも、あの時工場にいた人たちは、もういない。それが企業の都合だと考えると、セーフティーネットはあった方がいいのかなと思う」。淡々と話す。

     映画は、納豆だけの朝食シーンから始まる。自室、同僚、漫画喫茶……ただ撮っただけの映像が冗舌に語る。冬、杉並区内で日雇い派遣の仕事の後、雨の中を延々歩いた。泊まるところも金もなく、夜明け前に東京湾に出た。「探していたのは出口じゃなく、入り口だったんだ」。実感がラストシーンへとつながった。

     「映画を見てもらい、多くの人と話すことが、僕の入り口になりました。(日本経団連会長の)御手洗(冨士夫)さんにも見てほしい」。3月からテレビ番組のフリーADとして働く。【中島みゆき】

     【略歴】岩淵弘樹(いわぶち・ひろき)さん 仙台市生まれ。東北芸術工科大卒。映画は3月28日から東京・渋谷で一般公開。同名書籍も出版。26歳。