• 「一瞬」と「一瞬」




    ある映画のラストシーンにおいて、
    65歳で人生の終りを迎えた主人公が、
    家族や友人たちを前に、呟きます。


    この人生も、振り返れば、一瞬であった。


    「人生のはかなさ」に対する、こうした感懐は、
    映画だけでなく、文学や、手記においても、
    多くの人々によって、語られています。

    たしかに、我々の人生は、長くとも、100年。
    それに対して、地球の歴史は、46億年。
    そして、この宇宙の歴史は、137億年。

    その悠久の時間の長さからすれば、
    文字通り、それは、
    「一瞬」と呼ぶべき、短い時間です。

    しかし、そのことを思うとき、
    我々は、一つの大切なことに気がつきます。


    この地球の片隅で、そして、この宇宙の片隅で、
    一人の人間が、一人の人間と出会うとき。

    それは、その「一瞬」と「一瞬」が重なる
    「奇跡」の瞬間である。


    そのことに、気がつくのです。

    そして、そのことに気がつくとき、
    我々は、初めて、知るのです。


    「縁」


    その言葉の
    本当の意味を、知るのです。


    田坂広志